安伸投資
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アナリストレポートとは、証券会社が投資家向けに発表している、企業・業界分析レポートです。口座を開いている会社にもよりますが、日々注目銘柄やマーケット動向を分析し、買いや売りといった評価をしています。
今回は、そんなアナリストレポートの落とし穴について紹介していきます。
まずは結論です。アナリストレポートを信じてはいけない理由は、「証券会社が発表しているもの」だからです。
どういうことかと申しますと、証券会社はアナリストレポートと反対の動きがすることで儲かる仕組みを持っているのです。その儲けというのは、アナリストレポートと同じ動きをした投資家たちの損失から来ています。
証券会社の儲ける手口は、現物の取引ではなく空売りです。「空売り」とは信用取引の一種で、簡単に説明すると、「保有してない銘柄を証券会社から借りて、今の株価で売り、将来株価が下がった時点で買い戻す」手法のことです。
将来株価が下がることがわかっていれば、「安く買って高く売る」が成立するため、リターンが期待できます。
それでは、証券会社のアナリストレポートを使用した空売り戦略の具体例を見ていきましょう。
アナリストレポートを使用した空売り戦略によって圧倒的な利益を上げているのが、かの有名なゴールドマンサックスです。
分かりやすいのは2011年に行われたオリンパス株のトレードでしょう。2011年10月12日に、ゴールドマンサックスはオリンパス株に関して、「買い」を推奨するアナリストレポートを発行しています。しかしその翌日、ゴールドマンサックスは大量の空売り注文を行っています。
実は当時、オリンパスの決算報告は、いわゆる粉飾決算が疑われていました。当時の社長(ウッドフォード氏)は損失隠しとして経営陣を告発していましたが、2011年10月14日に解任されてしまいます。
その後、オリンパス経営陣は損失隠しを認めます。このため、株価が急激に下落し、ストップ安の734円となりました。
この騒動によって、ゴールドマンサックスは約22億円以上の利益を得ているといわれています。時系列をまとめると以下の通りです。
どこで利益を確定したかは定かではありませんが、仮に734円の時点で確定していたとしたら、40億円の売却額に対して18億円の買戻し額なので、22億円の利益となる計算です。
なお、2011年11月11日は、さらに下落し436円をつけていましたので、実際はもっと多いかもしれません。
証券会社はインサイダー取引防止のため、アナリストレポートを発行する部署と資産運用をする部署とでは、情報の行き来ができないようになっています。
しかし、今回ご紹介したような事例は、探し出せば枚挙にいとまがありません。
こういうことが起こるのは、証券会社のビジネスモデルにおいて、口座を開いた投資家が儲かる商品よりも自社が儲かる商品をつくらねばならないという理由があるからです。
オリンパス株の事例では、株価が下がることが事前にわかっていた証券会社が、あらかじめ空売りを仕掛けることで莫大な利益を上げました。少なくとも株価が暴落するときでさえ、ボロ儲けできる仕組みがあることを知っておきましょう。
このほか、仕手筋のように、株価を操作する・もしくはばれてないだけでインサイダー取引をするような集団が、市場には少なからず存在します。
ここからは、このような誰かがしかけた流れに乗っていくための手法を紹介していきます。
前述のオリンパス株では空売りによって利益を上げました。実は「有価証券の取引等の規制に関する内閣府令」という法令により、証券会社などの市場参加者は信用取引残高の報告義務があり、残高割合が0.5%以上のものについては、証券取引所やJPX(日本取引所グループ)で残高が公表されています。
信用倍率ではなく、信用取引の「売残」を見るようにしましょう。倍率では数字が小さいため変化に気づきにくいです。
例えばその業界・その銘柄について、重要な事実が発表される前に、急に出来高や残高が増えた場合は、証券会社や仕手筋が何か仕掛けてきた合図です。
例えばオリンパスでは、1日で約40億円の空売りが発生しました。この時はまだ何の確定情報も出ていない時期で、40億という額は明らかに異常値です。
このように、確定情報が何も流れていない中で、つまり空売り残高が増えた理由を説明することができない銘柄は、何かの仕掛けの合図だととらえることができます。
空売り残高と同様に、こちらも確定情報が何もなく、急に注目され始めた理由を説明することができない銘柄は、何かの仕掛けの合図だととらえることができます。
例えば、大手証券会社がアナリストレポートとともに公表している「推奨銘柄」などは注目です。こうしたものは公表される数日前に、出来高が増えていることが一般的です。
これは、推奨銘柄と公表される前には、すでに証券会社の自社取引や1人で数億円動かせるような大手の取引先には、すでに営業から情報がもれている可能性があります。つまり、推奨銘柄と公表される時点ですでに高値になっている可能性が高いです。
しかし、推奨銘柄となる前に出来高が増えていることがあります。逆に言えば、出来高に注目しこの流れこの流れに乗ることができれば、高値つかみを避けられるでしょう。